こんにちはオガブログです。
現役商社マン(専門商社だけど。。)の私が今回は、『総合商社』『専門商社』の違いについて、
・具体的な事業内容の違い。 ・実際の仕事内容の違い。 ・商社各社の特徴。
を切り口に解説したいと思います。
商社を志望する学生や転職を検討している方の参考になれば幸いです!
総合商社とは?
三菱商事株式会社
伊藤忠商事株式会社
住友商事株式会社
三井物産株式会社
丸紅株式会社
豊田通商株式会社
双日株式会社
の7社を『総合商社』と呼びます。
- 1)仕入れ、販売
- 2)貿易
- 3)中間加工
- 4)物流
- 5)市場調査、事業企画、事業投資
といったビジネスで、「ラーメンからロケットまで」様々な商材を取り扱っており、
古くから日本の商業全体を牽引する役割を担っていました。
新しい事業や新しい国に日本企業が進出する際、必ず総合商社が力を振るっていたのです。
商社の詳しい事業内容については、
に詳しく解説しています。
総合商社の仕事内容は?
総合商社の仕事は、本当に幅広く多岐に渡ります。
例えば、「食品」輸入販売に関わる部隊の社員の場合、
・食品資源(小麦、米、水産物等)を海外から輸入、販売する。 ・食品資源の開発。(新興国での農業誘致)
等が、仕事内容になります。
ちなみに輸入された食品資源を、日本国内の顧客(スーパー等)に販売する。」といった業務は、総合商社の子会社(専門商社やメーカー)が行うケースが多いです。
他の商材でもこの構図は多い様に思いす。
一方で、「生活産業」の事業計画に関わる部隊の社員場合、
・コンビニや小売店の出店、出資。 ・海外ブランド衣料品の輸入、販売(専売権の取得交渉) ・映画等のエンタメ業界への出資。(広告代理店等と連携)
等が仕事内容になります。
他にも、不動産投資をする部隊や、外貨管理をする部隊なども。
セグメント(商材、事業分野)によってい細かく組織が分かれており、
部署が変わるとまるで違う会社の様に仕事内容が変わります。
当然、異動で部署が変わる事もしばしばありますので、
ビジネス全般を幅広く、グローバルに対応できる総合力が求められます。
総合商社7社の特徴、売上高(2020年3月決算まとめ)
2020年3月末の決算情報(2019年度決算)をまとめたデータが以下となります。
各社の決算短信から連結売上高とセグメント別の結果を見て、ざっくりまとめました。
会社名 | 売上高 (連結) | 好調な分野 | 特徴 |
三菱商事 | 14兆7,797億円 | 天然ガス、金属資源、食品、電力 | 売上バランス良 ローソン経営 |
伊藤忠商事 | 10兆9,829億円 | 金属資源、機械、食品 | 食品・繊維、強 ファミマ経営 |
三井物産 | 6兆8,850億円 | 化学、機械、生活産業インフラ、 金属資源・エネルギー | 生活産業・化学、強 |
丸紅 | 6兆8,276億円 | 航空・船舶、建機・自動車、産業機械 | 食品に強み 今期1900億超赤字 |
豊田通商 | 6兆6,940億円 | 金属資源、自動車、ロジティクス | 輸送機系、強 トヨタ系列 |
住友商事 | 5兆2,998億円 | インフラ、生活、不動産、化学 | 金属・化学、強 |
双日 | 1兆7,548億円 | 金属資源、エネルギーインフラ、化学、 生活産業 | 生活産業、強 NIKE・タバコ等 |
各社、兆越えの売上を上げており、超巨大企業ですね。
専門商社とは?仕事内容は?
総合商社と同様に、
- 1)仕入れ、販売
- 2)貿易
- 3)中間加工
- 4)物流
- 5)市場調査、事業企画、事業投資 (←専門商社では一部の企業のみ)
を事業内容としていますが、特定の商材・商品に特化している。
といった特徴があります。
総合商社が幅広い分野をカバーしているのに対し、
専門商社は特化した分野で、深い知識やノウハウ・人脈を武器に総合商社に負けない競争力を発揮している会社が多数あります。
よって営業マンは、専門分野でメーカーに負けない位の深い知識とビジネスノウハウ、
総合商社と同様にグローバルに対応できる力が求められます。
専門商社の種類について解説
また、専門商社には、
①総合商社系
総合商社が出資している会社。もしくは総合商社の一部門が独立した会社。
②メーカー系
メーカーの商社機能からスタートしている会社。親会社がメーカーである事が多い。
③独立系
独自に商社として創業された会社。財閥やメーカーの影響を受けづらい。
といった、企業の生い立ちによって分類した言い方もありますので、覚えておいた方が良いかと思います。
当然ですが、①総合商社系、②メーカー系は親会社、株主の影響を受ける事が多いです。
例えば、「三菱系の商社だったら三菱ブランドの商品を優先して売る必要がある。」とか。
専門商社/業界ごとまとめ(2020年3月売上高まとめ込み)
専門商社の業界各社について現役商社マンの視点で解説します。
またその特徴や業界の2020年動向についても分析していきます!
①鉄鋼系商社
会社名 | 売上高(連結) | 特徴 |
伊藤忠丸紅鉄鋼 | 2兆4,086億円 | 海外比率高い。販売チャンネル多数。 丸紅50%、伊藤忠50%の出資。 |
メタルワン | 2兆3,087億円 ※2018年度売上 | M&Aに積極的。鉄鋼業界で最強。 株主の双日をより売上大。 三菱商事60%、双日40%出資。 |
JFE商事 | 1兆6,710億円 ※2017年3月期売上 | JFEグループの専門商社。 メーカー系。安定感あり。 同列会社のJFEスチールの取り扱い大。 |
阪和興業 | 1兆9074億円 | 2020年3月決算は140億円経常利益赤字。 南アフリカのクロム鉱石採掘への出資が 上手くいっていない。独立系。 |
鉄鋼業界は、2020年に日本最大の鉄鋼メーカー「日本製鉄」が呉製鉄所の全面閉鎖や和歌山製鉄所で高炉一基の閉鎖を決めています。
昔は、「製鉄=日本」でしたが、
現在は内需については落ち込む一方、
輸出についても、原材料の高騰や中国・東南アジアの製鉄メーカーとの競争が激しく、日本メーカーのとしては厳しい状況となっています。
2020年鉄鋼商社業界まとめ
業界全体としては、徐々に落ちていく事が確実視されていて、
商社としては、生き残りをかけて有望業界(レアアース等)
への出資・投資が積極化している。
当然、中国もM&A攻勢を仕掛けてきている。
日本は総合商社と専門商社がタッグを組んで商権確保を急いでいる様子。
②化学系商社
会社名 | 売上高(連結) | 特徴 |
長瀬産業 | 7,795億円 | 190年以上の歴史ある会社。独立系。 ベンチャーファンドへの出資や、 医療機器ベンチャーへの資本提携等、 先端技術への投資に積極的。 AR装置や半導体製造装置を作るメーカーも子会社化。 |
稲葉産業 | 4,587億円 | 住友化学が大株主。メーカー系と独立系の間。 スウェーデンの燃料電池メーカーと 総代理店契約を結んだり、 多能性幹細胞(iPS細胞とか)事業へ投資したりと、 積極的な事業創出の動きが見える。 |
蝶理 | 3,293億円 | 東レが大株主。メーカー系。 繊維・化学品の2本柱。中国での事業に強み。 |
化学業界は、日本企業が高い開発力・技術力・製品力誇っている業界です。
液晶や二次電池業界では、中国の進出による日本企業の衰退が進んでいますが、
原材料は未だ日本企業が高いシェアと競争力を誇っています。
化学系商社は化学製品という、向こう数年間は手堅いベース商材を守り、新分野への進出や新技術への投資を進めています。
2020年化学系商社まとめ
化学品で手堅い商材・商権を持っている会社は向こう数年間は盤石。
一方でベンチャーや新技術への投資も積極的に行われている。
化学品は商品数がとんでもなく多い為、リスク分散できているケースが多い。
爆発的に売上が伸びる事も無いが、下がることも少ない。
ベンチャーや新技術への投資は期待大。
③機械系商社
会社名 | 売上高(連結) | 特徴 |
岡谷鋼機 | 8,756億円 ※2020年2月決算 | 350年の歴史を持つ、超長寿企業。独立系。 名古屋本社。堅実経営。 産業機械以外にも、鉄鋼の取り扱い大。 |
山善 | 4,721億円 | 工作機械、産業用機械・部品の卸売りメイン。 ご存じ「YAMAZEN」ブランドで自社商品も開発。 |
ユアサ商事 | 4,913億円 | 350年以上の歴史。商社では日本で一番古いらしい。 産業機械、工作機械、住宅建材等の卸売りメイン。 |
工作機器や産業機械(ロボットや搬送機器)等の機械業界は、日本のメイン産業である自動車業界の景気に大きく左右される。
今年2020年は、トヨタ自動車がコロナの影響による営業利益の大幅ダウンを発表しているが、機械商社も影響を少なからず受けます。
機械商社は、事業が多角化できているか?が今後の生き残りに掛かってくるはずです。
2020年機械系商社まとめ
自動車業界の景気悪化を受ける。自動車業界メインの商社は厳しい。
景気変動に強い業界(食品、化学、医薬品)へ強化や
海外進出を積極的に行っている会社が生き残る。
④IT、情報系商社
会社名 | 売上高(連結) | 特徴 |
日立ハイテク | 6,946億円 | 日立製作所の100%子会社。 日立グル-プの商社と情報機器部門が統合して 発足。 技術力高い。商社っていうよりメーカー色強。 |
マクニカ・富士エレ ホールディングス | 5,211億円 | マクニカと富士エレクトロニクスが統合。 海外製品強い。ネットワーク、IOT・AI等最先端事業 への取り組みが魅力。 |
兼松 | 7,218億円 | 元々は総合商社であったが、 現在は情報・食品・機械の分野に絞っている。 情報✙食品で売上5,000億円位。 このカテゴリーで良いか迷いましたが。。 |
大塚商会 | 8,865億円 ※2019年12月決算 | 「たのめーる」で有名。 システム・ネットワーク構築事業にも注力。 売上成長率凄い。 |
IT、情報系商材は今後どんどん伸びていく業界です。
一方、商社としては単純な卸売りで伸びる業界では無いので、自社でのシステム開発やサービス開発等、メーカーに近いビジネスが増えてきています。
また、IT・情報系の業界はアメリカを筆頭に海外メーカーが技術力・製品力が高く、
その商権を確保するために日系商社は様々な投資を実施しています。
単純に販売代理店としてり扱うだけてでも、たくさんの勉強が必要な業界です。
2020年IT・情報系商社まとめ
今後も伸びる業界ではあるが、機器の卸売りだけでは今後厳しい。
商社自社の商品やサービス開発と海外の先端技術をいち早く取り込む。
この動きが重要になってくる。
⑤食品系商社
会社名 | 売上高(連結) | 特徴 |
三菱食品 | 2兆6,546億円 | 三菱商事が主要株主。食品卸国内一位。 常温、低温食品に強み。 |
日本アクセス | 2兆1,319億円 | 伊藤忠商事の100%子会社。 元々は雪印グループだった。 |
加藤産業 | 1兆632億円 | 関西本社。独立系。自社ブランド商品あり。 冷凍食品、インスタント食品に強み。 |
伊藤忠食品 | 6,612億円 | 伊藤忠商事が主要株主。 酒類に強み。 |
食品系の商社はほとんどな会社がイオン等のスーパー、コンビニを主要顧客としています。
三菱食品はローソンに強く(ローソンの経営は三菱商事)、
日本アクセスや伊藤忠食品はファミリーマートに強い。
(ファミリーマート経営は伊藤忠商事)
伊藤忠食品はセブンイレブンとの取引も大きい。
大手食品系商社は、自社で物流センターを建設して流通機能の強化に力を入れています。
冷凍輸送や低温輸送、細かい仕分けをした上での個別店舗への輸送等、
小売店の要望に応える、物流品質が売りです。
2020年食品系商社まとめ
大きく景気の変動を受けない事が、食品業界の強み。
物流機能に特化している為、細かい物流網を持っている会社が強い。
中規模会社の合併・吸収が進みそうな業界。
まとめ
総合商社と専門商社の違いについて、解説させて頂きました。
商社への就職や転職を考えている方は、業界研究、企業研究の参考にして下さい。
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