昨年(2020年)の始め1月中旬頃、私はとある中国顧客の忘年会に呼ばれて、上海に出張していました。
春節休み(旧正月)は中国では一年を通して最大の連休であり、毎年2月上旬から10連休ほど。
日本のお正月休みに近い感覚です。
忘年会では、大型ホテルを貸し切って、数百人規模の忘年会を開催。飲んで踊って歌って飲んでの大騒ぎ。
私はゲストでしたが、あくまでも相手は「お客様」。たくさんのテーブルを回りながら各キーパーソンと談笑し、
「今後もよろしくね!」「干杯!(カンパイ)」「朋友!(ともだち)」
と、関係性を構築して今後に繋げる。
私にとって、中国でのビジネスにおいて会食での人脈構築は、定番かつ必須業務でしたが、この1年でガラっと変わりました。
2020年コロナウイルスが世界中に拡大し、2021年現在でも多大なる影響が出ています。
海外出張の禁止、国内に関しても出張自粛、接待なんてもってのほか。
打合せや商談は、オンラインミーティングがメインとなりました。
2020年は『商社』『商社マン』にとって、
会社として、個人としての能力が剥き出しにされた1年でした。
コロナウイルスの影響 生き残る『商社』とは?
商社に限らずコロナ禍の現在において、
〇業界(景気良い)
医薬、テレワーク商品、通販、物流、食品(家庭内向け)、半導体(5G)、家庭紙(マスク、ペーパータオル)、エンタメ(サブスク等家庭内向け)、クラウド・AI・仮想化
△業界(良くも悪くもない)
化学、機械装置、バイオマス、鉱物(レアアース、電池材料)、農業機械、自動車
×(景気悪い)
観光、交通(鉄道)、食品(外食)、エンタメ(屋外向け)、BtoC商材業界(家電、住宅、衣服)、工作機械、建設機械
業界ごとに、私が感じている現在の景気感です。
総合商社であれば、上記業界全てを網羅してビジネスを行っています。
この状況下でも、事業によっては増益を叩き出しているビジネス領域の広さが総合商社の強みです。
一方、「専門商社」はどうか?
文字通り、ある業界や商材に特化した商社である「専門商社」は明暗がはっきり分かれます。
専門商社をざっくりと分けると以下の通り、
①鉄鋼
②機械
③化学
④電子、半導体、ITシステム
⑤エネルギー
⑥繊維
⑦食品
⑧医薬
上記、〇△×を見ると、
④電子、半導体、ITシステム
⑦食品
⑧医薬
の業界に属する専門商社は、この状況下でも業績が良く、安定しているか?
ずばりそうだと思います。
少し、分析・解説していきたいと思います。
『食品』『医薬』業界
衣食住に関わる業界は、景気変動が少ない業界と言われています。
特に食や健康にかかわる業界は、特にその傾向が強いです。
しかし商社はメーカーとは違います。
『食品』『医薬』業界の属する専門商社のほとんどは、卸売・物流に特化した会社がほとんど。
有名どころでは、三菱食品、加藤産業、伊藤忠食品、メディパル、アルフレッサ等。
『食品』『医薬』業界の専門商社は、
「規模=売上=安定性」の傾向が強い業界に感じます。
卸特化ビジネスの為、物量がモノを言う。取扱商材量がモノを言う。物流機能がモノを言う。
そんな業界に思います。
(『食品』に関しては、一部地域密着で強い企業もあります。)
コロナ禍に関わらず、大手『食品』『医薬』業界の専門商社は安定していると思えます。
コロナウイルス対策でマスク、アルコールスプレー、除菌シート等を需要は急増しましたが、一過性のもので、
基本的には時世によって、大きく売上変動が起こる業界ではないかと思います。
『電子、半導体、ITシステム』業界
この業界の有名どころ商社でいうと、
日立ハイテク、伊藤忠テクノソリューションズ、マクニカ、東京エレクトロンデバイス、大塚商会、ダイワボウ情報等の企業が該当すると思います。
この業界の現状を私なりに分析すると、
電子、半導体部品
自動車工場では2021年の現在、工場ラインが止まってしまうほど、半導体が不足。
コロナ禍で急激に落ち込んだ需要が徐々に回復して、各社取り合いになっている。
5G関連機器にも必ず使われる部品で、他業界で需要急騰。
今後10年以上、物量としては需要が落ちる事はない。
(価格競争は間違いなく厳しくなる。)
電子、半導体製造用装置
日本国内では、東京エレクトロンがNo.1で他にも数社高い技術力を持っている会社がある。
部品同様に、需要増。
一昔前の液晶需要爆発の時と同様に、
半導体製造メーカー各社に今世代の製造装置が行き渡ったら、一旦落ち着きそう。
今後5年程度は伸びていくか。
ITシステム
クラウドサービス、仮想化ソフト、IOT、AI、非接触決済、画像認識等々。商品は多岐に渡る。
開発力、製品力ともに米国が圧倒的。工業向け製品は日本も頑張っている。
他業界開発に比べ、圧倒的に開発コストが安くすむケースが多く、小規模でも高い技術力を持った会社が多数ある。
価格競争が激しい。
M&Aが多い業界。総合商社や専門商社が提携先や吸収先を常に模索している業界。
今後、どう考えてもこれら業界の需要は伸びます。
業界外の専門商社でも、
・機械商社が工場内IOT化に取り組む。
・食品商社が物流会社と提携して、商品のトレーサビリティシステムを開発。
・化学商社がITシステムに特化した子会社を設立。
と取り組んでいます。
専門商社の未来
コロナ禍で世界的に景気が悪い中、
・『食品』『医薬』・・・そもそも安定している+コロナ禍での需要増
・『電子、半導体、ITシステム』・・・そもそも成長している+コロナ禍でさらに需要増
と世間全体が不景気なので余計に目立っています。
専門商社の場合『活況な業界の需要、商品』×『自社が強い業界の需要、商品、人脈』
と、活況な業界に絡んでビジネスチャンスを作っていかないと、どんどんジリ貧になってきます。
専門商社の中には、歴史が長く一つの業界にどっぷりという会社が多いです。
自社の強みを生かしつつ、柔軟な経営が出来ないと、今後専門商社に未来は無いように思います。
商社マンの未来
私の様な、専門商社の商社マンは色々と考えなければなりません。
『商社マン』は、商売(営業)に特化したスキルを持った人が多いと思います。
営業スキルはどの業界でも必要ではありますが、
コロナ禍でWEB会議やテレワークが当たり前となっている現在、『対面・対話・接待』に重きを置いた営業スタイルは必要とされなくなっています。顧客も商社も無駄であったと気付いてしまったのです。
今後コロナウイルスの影響が無くなったとしても、商社各社は交通費や接待費を掛けずに商品力で商売できる仕組み作りに注力していくでしょう。
そこで、必要とされる商社マンとは?
私は『専門性と希少性』を持った人材だと考えます。
例えば、
「営業ができる」×「IT業界に特化して、情報を沢山もっている」×「ITシステムの仕様書が書ける」
「営業ができる」×「語学ができる」×「CADによる図面作成ができる」
「営業ができる」×「語学ができる」×「輸出入実務ができる」×「マーケティングができる」
等。
今までは、何となく『商社マン』の一言で済まされていた部分ありました。
手広く、浅く、効率良く手堅く稼ぐ事が一流の商社マンでしたが、今後は具体的に何ができる人材なのか重視される様になっています。
自分にそのような価値があるのか?今後しっかりと自己分析したく思っています。
商社マンの収入面での影響(余談かつ重要)
余談ですが、かなり重要。
コロナウイルスの影響で収入面でどのような影響があったのか私の事例(専門商社勤務)を紹介します。
会社業績自体は、前年比売上額、経常利益ともに▲15%程度。
まだ黒字ですが、コロナウイルスの影響でバッチリ業績ダウンしています。
・基本給
変動無し。
・残業
若干あり。しかしテレワークメインとなり激減。
・ボーナス
基本給×5~6カ月分/年間 ⇒ 基本給×4か月/年間
年収ベースで▲2カ月分。
・出張手当
国内出張、海外出張がほとんど無くなり、年間50万円以上はあった出張手当がほぼゼロに。
手当等も含めると、年収はかなり下がりました。
※「専門商社の年収」についての記事です。
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